妊娠初期の流産は誰にでも起こりうることです。
その多くが染色体異常など胎児側の問題であり、ご自身の過ごし方とは関係ありません。
(反対に妊娠10週以降の流産は少なく、抗リン脂質抗体症候群の診断基準の一項目に該当し、不育症を疑います。)
ARTオンライン登録によると、2018年における全体の流産率は25.5%でした(25歳14.3%, 30歳16.8%, 35歳20.1%, 40歳32.1%, 43歳49.9%, 45歳60.6%)。
流産は出産へのヒントを教えてくれます。
不妊治療、特に体外受精では、初めての流産であっても流産絨毛の染色体検査を行うことが考慮されます。
遺伝に詳しい産婦人科医はまだまだ少なく、検査の説明すらされていない患者さんを多くみてきました。
医療者は検査をするしないに関わらず情報提供はすべきで、患者さんの選択肢を奪うことがあってはいけないと感じています。
絨毛染色体検査は遺伝子レベルの変化まではわからないのですが、染色体異常があれば受精卵側による自然淘汰、染色体異常がなければ母体側の不育症を疑う判断材料になります。
ご夫婦に由来する、染色体の一部が入れ替わった転座や逆位などの予期せぬ変化がみつかることもありますので、絨毛染色体検査を行うか否かは、お二人でしっかり話し合う必要があります。これらの変化は染色体の数の変化、すなわち遺伝子量の変化を伴いませんので日常生活には全く支障がありませんが、不妊や流産の原因になり得ます。
染色体検査はG分染法が基本です。
G分染法では細胞培養を行うのですが、混合した母体の細胞は増殖しやすく、結果を46,XXと誤ることがある点には留意しなければいけません。
マイクロアレイのように高解像度で染色体数の増減を解析できる検査もありますが、均衡型転座や逆位は検出できないので、検査対象は限定的です。
流産手術は保険適応ですが、染色体検査は自費で高額なため、費用対効果を考え、その費用を今後の採卵や移植にまわす選択肢もあります。
当院では少しでも心理的負担が軽減できるよう、検査費用を全国相場の半額に設定しています。
また、静脈麻酔によるいわゆる無痛流産手術を行っており、余計なストレスを感じることがないよう配慮しています。
手術も吸引法、手動真空吸引法(MVA)、胎盤鉗子法(子宮内膜を傷付ける掻爬は通常行いません)と全ての方法に対応しています。
子宮と心に優しい手術を希望される方や、通院先では専門的な絨毛染色体検査を受けることが難しい場合もご相談ください。
流産後はすぐに妊娠しても問題ありません。
悲しみ過ぎて長い時間が経過してしまうと、加齢により妊娠率が低下し流産率が上昇してしまいます。
あと少しです、一緒に頑張りましょう。