多囊胞性卵巣症候群(PCOS)

多囊胞性卵巣症候群(PCOS)とは?

妊娠適齢期女性の1割弱にみられる「体質」です。
病気ではなく、卵胞発育が起こりにくい体質と考えるのが適切かと思います。
体質を知ってうまく付き合っていきましょう。

①診断基準
以下のⅠ・Ⅱ・Ⅲを全て満たす場合を多囊胞性卵巣症候群(PCOS)と診断します。
Ⅰ.月経不順…生理不順と同じ意味です。
Ⅱ.多囊胞性卵巣…エコーで●(小卵胞)がたくさんみえる状態です。
Ⅲ.血中男性ホルモン高値 or LH高値かつFSH正常…採血検査でわかります。

まず、Ⅰ.月経不順を解説します。
PCOSの方はよく、「周期が長い」、「時期を予測できない」、「少量の出血が不規則にある」と月経の不調を訴えます。
出血がある=排卵している、ではありません。
ここは皆さん勘違いされているので、別の記事でしっかり説明します。

続いて、Ⅱ.多囊胞性卵巣ですが、これはエコー検査で●(小卵胞)がたくさんみえる状態です。
卵胞がうまく発育できず、小さい段階で発育が止まり大渋滞している状態です。
正確には卵胞内の卵胞液が黒くみえています。
卵子は ・ ほどに小さくエコーではまずみえません(普段、卵子は卵胞壁にくっついています)。

最後に、Ⅲ.血中男性ホルモン高値 or LH高値かつFSH正常ですが、これは採血検査でわかります。
アンドロゲンを男性ホルモンと呼ぶ慣習があるのですが、全ての女性に男性ホルモンは存在します(男性の方がよりたくさん存在します)。
男性ホルモンはアンドロゲンの一種であるTES(テストステロン)を測定されることが多いと思います。
LHとFSHは、通常LH<FSHの関係にあるのですが、PCOSの方はこれが逆転してLH≧FSHを示すのが特徴です。採血時期によってはわかりにくいこともあり、時期をかえて採血する必要があります。

②症状
月経不順
主に肥満例では多毛やニキビといった男性化徴候

③原因
肥満が一因のこともありますが、日本人では下垂体からLHが過剰分泌されるやせ型のPCOSが多いです。

下垂体LH分泌が異常亢進し卵巣莢膜細胞アンドロゲン産生・活性亢進
主に肥満例ではインスリン抵抗性も卵巣のアンドロゲン産生促進

高アンドロゲン環境下では前胞状卵胞がFSH感受性を獲得できず発育停止
さらに前胞状卵胞増加によりAMHとインヒビンが過剰分泌され下垂体FSH分泌が阻害され卵胞発育停止

④遺伝
遺伝的素因も関与しますが、発症には生活習慣も大きく影響します。

⑤体質改善
肥満の方はお菓子とジュースを禁止し、毎日30分運動してください。
急なダイエットは逆効果なので三食はしっかり食べてください。

やせ型でもインスリン抵抗性(糖尿病の気がある)を指摘される方がいます。
よくチョコ・アメ・ガムを食べたり、ジュースを飲んでいませんか?
血糖値の上昇を考えて低GI食品を選んだり、食べる順番にも注意しましょう。

ビタミンDはPCOSの体質改善にも有効な可能性があります。

⑥不妊治療:
クロミフェン、レトロゾール、FSH注射薬を用いて卵胞発育を促します。

しかし、卵胞を1個だけ発育させるのは難しく、2個以上発育すると多胎のリスクが生じます。
複数個の卵胞が発育してしまった場合は、タイミングや人工授精をキャンセルしなければならず、せっかく通院して卵胞を発育させたのが無駄になってしまいます。
うまく1個の卵胞が発育しても、中の卵子が赤ちゃんになり得る質の良いものか否かわかりませんし、排卵後にキャッチ(ピックアップ)されているかもわかりません。
PCOSの治療は根気を要します。
体外受精であれば複数個の卵子が発育しても全て回収して、受精や胚分割を確認後に最良の1個を移植すれば良いので、多胎のリスクも減り効率の良い治療方法と言えますが、PCOSだけでは絶対的な体外受精の適応ではありませんので、治療方針はご夫婦でよく話し合う必要があります(1胚だけ移植しても、後に分かれて一卵性の双子になることはあります)。

着床障害を引き起こす子宮内膜ポリープがないかもエコーや子宮鏡検査でチェックします。

肥満やインスリン抵抗性のある方にはメトホルミンが併用されます。
メトホルミンはインスリン感受性を増強し、肝臓での性ホルモン結合グロブリン産生も増加させるので、血中遊離TESを減らし高アンドロゲン血症を改善します。

※インスリン抵抗性の目安
HOMA指数=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405 ≧2.5でインスリン抵抗性あり

さらには腹腔鏡下卵巣多孔術といって、あえて卵巣に小さな穴をたくさんあける手術もありますが、原始卵胞数は確実に減ってしまうため、自然妊娠に強いこだわりがなければ推奨していません。入院や全身麻酔を要する手術であり、術後癒着のリスクもありますので、手術前に体外受精を受けることも考慮してください。

その他、肥満の方は流産率が高く、妊娠糖尿病や高血圧のリスクもありますので、妊娠を目指した時点で食事と運動習慣を改めましょう。

⑦挙児希望がない時の治療
子宮内膜がEに暴露され続けることは子宮内膜癌のリスクです。
3か月に一度はPの投与を受けて消退出血を起こしましょう。
多毛やニキビにはTES低下作用のあるピル(マーベロン、ヤーズなど)が有効です。
PCOSで肥満の方は特に、2型糖尿病・心血管疾患・脂肪肝のリスクがありますので健康診断を受けましょう。

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